インターネットを活用した「小論文Eメール講座」の試み
−教員採用試験のための小論文講座−
現代大学生の論理的思考力の育成
自身の考えを表現する表現力の育成
インターネットを利用した「いつでも、どこでも取り組める」利便性の活用
学生と教員の新しい関わり合い
文責:竹内 英人
教員採用試験対策小論文Eメール講座
正規の授業ではなく、日常的な継続講座(第1期:平成18年12月から平成19年3月、第2期:平成19年4月から同8月まで、特別講義『論作文の書き方』平成19年3月14日、5月17日の2回実施、教員採用試験直前実践講座:平成19年8月15,16,17日)
名城大学教職センター専任教員 (竹内英人、酒井博世、平山勉、曽山和彦、片山信吾 の5名)
特になし(教員作成の独自教材、ただし参考図書として、『教員採用試験のための論策文』:大阪教育図書株式会社)
近年、学生の「活字離れ」が進み、特に「書く能力」が大幅に低下している。この状況を受けて、本学教職センターでは教員を目指す学生を対象に、自分自身の考えを表現し明確な教職観を身につける一つの方策として、小論文の指導に力を入れている。今年度から従来の教員による個別添削指導に変わってインターネットを活用した小論文指導を導入した。導入した一番の理由として、遠距離通学や部活動などで教員の指導を受ける時間が十分に確保できない学生の、「もう少し気軽に、いつでもどこでも小論文の指導を受けるシステムを作ってほしい」という要望が年々増加してきたという点にある。そうした背景から本講座のテーマとして、「学生の多様なニーズに応える、いつでもどこでも指導が可能なユビキタス感覚の小論文指導」を掲げた。また、本講座の目的として、(1) 小論文に取り組むことによって、自身の表現力、論理的思考力を鍛える。(2) 小論文指導を通して、将来、教員になるために必要な教職観を身につけさせる。(3) Eメールを活用することによっていつでもどこでも取り組む環境を作り、学生自身の主体的な学びの場を作る。
すなわち、単なる教員採用試験のためだけの対策講座的な要素に留まらず、小論文指導を通じて、学生の学びへの姿勢を感化すると同時に、将来、教師になったと時にも役立つ講座を目指した。
近年、「いじめ」、「不登校」、「学力低下」などをはじめとする様々な教育問題を抱える中、社会から「より実践的指導力のある質の高い教員」が望まれている。これは単に教科指導力や生徒指導力について高い指導力を発揮するだけに留まらず、中央教育審議会の答申に挙げられる「新しい時代に向けての教育の在り方」に対し、自分自身の考えを持ち、それに向けての教育に対する強い信念を持った教師が求められている。つまり、今日的教育課題を正確に把握し、単にマニュアル通りの指導ではなく、「自分だったらこのように対処する」といった自分自身の考えを表現し、実行する力が求められている。こうした背景から、近年の教員採用試験では従来の教科に関する高い専門性を重視する筆記試験以上に人物重視の傾向となり、その人物の内面、つまり人間性を評価する面接と小論文を重視する都道府県が増えてきている。そうした意味では今後の教員養成で大事なことは、実践的な指導力と共に、将来の明確な教師像、教育観を持った学生の育成が望まれる。日頃の教職の授業においてもこうしたことは心がけて指導しているつもりではあるが、どうしても理論中心の講義形式となり、教員主導型の一方通行的な講義が多い。つまり、学生自身が課題に対してじっくりと取り組み、自分の意見をまとめ、表現するという機会はレポートや試験以外に実施しにくい状況にある。また、近年、学生自身の「自ら学ぶ意欲」の低下は、子供達に「学ぶ喜び」を伝えるべき教師を目指す学生においても同様の傾向にある。こうした状況の中、日々の授業だけで学生の能力を育成することは難しく、「授業を離れてしまえばそこで終わり」という学生に対し、いかにして主体的に学ぶ意欲を植え付けるかということが、本学教職課程の大きな課題であった。そこで、継続的に学生に問題意識を持たせ、主体的な学びの場になり、なおかつ、社会に求められる教師像の育成にも貢献する講座として本講座を開講した。
本講座の最大の特徴は、インターネットを活用した「小論文Eメール講座」という点にある。従来までの教員による個別添削指導は、フェイス・トゥ・フェイスの良さはあるものの、学生一人ひとりが教員とアポイントをとって、添削、個別指導をすることが時間的にも物理的にも大変な労力を要した。そこで、教員・学生にとって、より効率的にかつ、きめ細やかな指導が出来ないかという考えから、Eメールを活用した小論文指導に到った。つまり、本講座の最大のメリットは、「いつでも、どこでも好きな時間に自分のペースで小論文の添削指導が受けられる」という点にある。このシステムは学生自身がインターネットを利用できる環境さえあれば気軽に指導を受けることが出来るので、在学生はもとより、卒業生の指導も可能となり、より幅広い指導が可能となるというスケールメリットもある。それによって、従来の個別指導よりも気軽に受講でき、学生の受講意欲にも繋がると考えた。そして、この講座を通して「自ら学ぶ姿勢」を確立し、学生自身の主体的な学びに対する支援ができないかと考えた。また教員側にとっても、「時間の空いたときに指導が出来る」という大きなメリットがあり、学生指導のために時間を確保する必要がなくなり、大学外からの指導も可能となった。


本講座において学生は最初の指導教官を決める際に直接、指導教官に出向いて簡単な打ち合わせをするだけで、それ以降は講座のマニュアルに従って、インターネット上のEメールで指導を受ける仕組みになっている。そのため時間的・物理的効率性には優れている反面、直接指導教官と接する機会は少ない。小論文作成の技術的な指導はEメール上の添削においても従来の手書きによる添削に比べ、比較的遜色はないが、一方で「なぜ、このような考え方をしたのか」、「このテーマに関してどのような考えを持っているのか」といった、学生自身の考えを十分に聞く機会が無くなった。本来、小論文は単に自分の考えを表現するだけでは不十分であり、そのテーマの裏側にある思想、歴史的背景や現在の世論など、様々な視点から論じる必要がある。そうした意味では、小論文指導においても、単に文章の表現技術や論理構成を指導するだけではなく、一つひとつのテーマに対し、学生自身の教育観を引き出しながら、直接コミュニケーションをとって指導していくことが効果的だと考えられる。従来の個別添削の経験でも、学生自身が書いた小論文について指導教官と学生が直接、議論することによって、学生にとって何が足りないのか、何が強みなのかということがはっきりし、より一層的確な指導、添削に繋がるといったケースも多々見られた。こうした考えから、インターネット上での指導では十分に指導が行き届かない部分においては、指導教員が担当学生に対して「小論文オフィスアワー」を定期的に開催した。ここではEメール上の添削指導だけでは補えない細かな指導や、また小論文に取り組んでいる学生同士の交流する場を作ることにより、学生自身が抱えている問題点を発見したり、他人の意見を聞くことによってより広い視野が広がるという効果も現れた。実際に、この「小論文オフィスアワー」を導入して以来、指導教官無しで学生同士が自主的に互いの小論文について批評し合うといった自主的な勉強会も開かれ、単にネット上で添削を受けるといった受け身的な姿勢から主体的な学びの場へと発展した。
また、こうした学生同士の自主的な交流の中から出た意見として、「自分以外の人の小論文とまたそれらがどのように評価されているのか見てみたい」という要望が多数出たのを受け、名城大学教職センターHP内の小論文講座のページに許可を得た学生の小論文と添削例を掲載して、外部から自由に閲覧できるようにした。このように、インターネットを利用した効率的な指導とフェイス・トゥー・フェイスの直接指導を組み合わせることによって、よりきめの細かい指導が可能となった。
本講座の実施状況は以下の通りである。平成18年11月、名城大学教職センターHP上に「教員採用試験小論文Eメール講座」の項目を設置し、講座開設の目的、趣旨、方法を説明。12月から希望者の募集を行い、会員として登録をしてもらう。HP上に小論文のテーマ、評価基準など小論文作成に必要な最低限の知識・技術の紙上講義を掲載。担当はセンター専任教員で分担し、完全な指導担当性を敷く。登録した学生には指導担当から担当の確認をメールで配信すると共に指導を開始する。二週間サイクルで新しいテーマを提示し、学生は担当教員の合格をもらえば次のテーマに取り組むことが出来る。このサイクルを20年度教員採用試験直前(都道府県によって7月または8月)まで行う。途中3、5月に本学学生を対象とした、「論策文講座」を実施し、総仕上げとして教員採用試験直前期の3日間、「小論文実践指導演習」を通して、最終的なまとめを行う。採用試験後は、これまでの指導内容、方法について教員間で協議を重ね、その後11月から平成21年度教員採用試験に向けて、「小論文入門講座」を開設し、早い時期から学生の小論文に対する意識を高めていく。平成19年12月からリニューアルした新しい指導体制の元で「平成21年度教員採用試験対策小論文Eメール講座」をスタートする。 以下、HP上の内容を記す。
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平成20年度 教員採用試験小論文講座(Eメール講座)案内 期間:12月下旬〜採用試験3月まで(来年度は4月以降また連絡します)内容:Eメール、FAXを活用した小論文指導 対象者:名城大学在学生、卒業生で来年度教員採用試験を受験する学生 方法: (1) 希望者は学務センターに申し込みに行き、担当者が誰になるか確認(教員のアドレスを教える、学生の希望があればそれに添う。学務センターは5人の教員に平均的に割り振る。) (2) 学生は担当者が決まったら、一度担当者の研究室に訪問し、添削開始の意志を確認する。 学生の訪問を受け、教員は実施内容と方法を伝える。と同時に、5個の小論文のテーマ(HP参照)を与える。(全教員共通テーマ) (3) それを受け、学生は各自、ワープロ(ワードか一太郎を利用すること)で小論文を書き、指導教員にメールで添付ファイルで送る。教員はその小論文を受け、評価、添削を行い、学生に返信する。それを受けて学生は再度書き直す。このサイクルを繰り返し、合格するまで回書き直す。 (出来の良い小論文に関しては1回、2回で次のテーマに進んで良い。基本サイクルは1週間に1テーマ) (4) 一つのテーマが完了した段階で学生は指導教員を訪問し、直接アドバイス、講評を受け、次回のテーマに関しての指示を受ける。(小論文オフィスアワーの活用) (5) これを繰り返し、2次試験までに5個のテーマに 書くようにする。なお、県において特徴のある小論文を出す場合は、学生自身が自分でテーマを設定しても良い。 (6) 5個のテーマが終わった学生には各教員が必要に応じて新しい課題を出す。 (+5追加テーマ参照) (補足) ・小論文の字数の目安は800〜1000字です。自分が受験する県を参考にしてください。 ・小論文に関する書籍は教職相談室にあり、学生は担当教官の許可を得て、一人2冊まで借りることができる。(貸出期間2週間。さらに借りたいときは再度手続きをする) ・eメールが家でできない人は手書きやFAXでの添削指導も受け付けます。 (小論文のテーマ:自分の書きやすいものから始めてOK) (1) 教師に望まれる資質についてあなたの考えを述べよ (2) 学校5日制による学力低下が懸念されている。この問題に対し、あなたの考えを述べよ (3) 今日のすべての学校においては「特色ある学校作り」が求められている。あなたは一人の教員としてその要求にどう応えるか述べよ (4) 現在の学校教育では従来の相対評価に変わって絶対評価を用いられるようになった。これに対し、あなたは子どもを評価する上で何が大切か述べよ (5) 「愛国心」についてあなたの考えを述べよ。 さらに意欲のある人は担当教員に新たなテーマをもらうか、(+5テーマ)を取り組むと良いでしょう。 (+5テーマ:余力のある人用) (6) 生徒を「ほめる」ということについてあなたの考えを述べよ。 (7) 「いじめ」の指導について、あなたの考えを述べよ。 (8) 自分が教える教科について学ぶ意欲に欠ける生徒をどのように指導するか述べよ。 (9) あるデータによると全国の小中高の生徒の半数弱が「何でもないのにイライラする」と答えている。この結果について、あなたの意見を述べよ。 (10) 最近の子どもの特徴を挙げ、それをふまえ、現在、学校教育で一番必要とされることは何か、あなたの考えを述べよ。 一歩上行く、「教員採用試験小論文」を書くための小論文参考評価基準 小論文の採点官は以下のことを考慮して評価しています。意識して書きましょう。(1) 文章について (1000字の中に以下に挙げたようなことが10個あれば、内容にかかわらず不合格になると思っても間違いありません。) ・誤字、脱字はないか、上手でなくても良いが丁寧な字で書いてあるか? ・字数制限は守っているか?(指定文字数の95%以上は書く。越えてはダメ) ・用語の間違え、文法的なミス(例:「ら」抜き表現など)はないか? ・原稿用紙の正しい使い方はできてるか? ・「です・ます」調になってないか ?→「である」調のが好ましい。 ・「私」と表現するところを「僕」などと書いてないか? ・一文が長すぎないか? ・体言止めや比喩などの詩的、哲学的表現をしていないか? (小論文には凝った描写などは一切不要。) ・主述関係がきちんとしているか?(長い文章になれば張るほど主従関係がずれてくる) (2) 内容について ・テーマがしっかりとらえられているか? 資料やデータ、文章が与えられた場合、それらの資料の趣旨を読みとり、正しい問題提起ができるか?ここで、与えられた資料の趣旨を読み間違えると、ピントのずれた小論文になり、いくら内容が良くても評価は低くなる。ただし、教員採用試験においては与えられた資料に関して、趣旨が一つということはなく(答が一つということはなく)受験者がそれらの資料から自由にテーマを設定し(趣旨を読みとり)そのテーマに関して記述するという形式が多い。いずれにしても、与えられたテーマについて独自の切り口で問題提起できるか?ということが大事になってくる。 (例)「小学校における英語の必修化について述べよ。」 というテーマが与えられた場合、単に、必修化に対して「賛成」、「反対」を述べるだけでなく、なぜこうしたことが叫ばれるのかといった社会的背景などを考慮した上で、「英語を小学校の必修にすることによって日本の英語教育は変わるのか」、あるいは「真の国際人になるために早期の英語教育は必要か」などといった自分なりに新たな課題を設定できるかが他人とひと味違う小論文を書くポイントである。 ・与えられたテーマ(設定したテーマ)に対して自分の意見が述べられているか? 小論文とは基本的に与えられたテーマに対して、自分の意見(Yes、No)を提示する文章である。例えば「ゆとり教育について述べよ」という課題に対して、ゆとり教育に対して思いついた意見を並べるのではなく、ゆとり教育に対して、自分はYesなのかNoなのかを理論立てて主張していくのが小論文であることをしっかり頭に入れておいてほしい。 ・論理的、客観的に述べてあるか? 自分が提示した意見に対して、なぜそのような主張をするのか、ということを論理的、客観的事実に基づいて述べているか。単なる独りよがりの内容になっていないか。 ・幅広い視野が見られるか 教育には「これが一番」という正解はない。そうして意味で様々な角度から問題をとらえ柔軟な思考と幅広い観点で物事をとらえることができるか? ・以上で書いてきた内容をふまえて、自分だったらどのような教育実践を行うかを具体的に述べているか? 結論の部分で自分の教育理念、目指すべき教師像、具体的な教育実践を入れると内容に厚みが出る。教員採用試験の小論文では必ずこの部分を入れる。 ・構成はしっかりしてるか? 以上をふまえた、読みやすい構成になっているか。 良くある構成として、(起・承・転・結)の4部構成、(序・破・急)の3部構成が書きやすい。具体的な4部構成の例としては (ア)問題提起、(イ)意見提示、(ウ)展開、(エ)結論 などがある。 以下、もう一度、簡潔に採点基準をまとめておくと (□)テーマのの把握(正しくテーマを読みとっているか) (□)表現力(主語・述語・誤字・脱字・字数制限) (□)論旨(自分の主張)の妥当性(論理的、客観的であるか) (□)具体性(自分が教師になったとき、具体的にどのような教育実践をするか述べる) (□)視野の広さ、柔軟性、協調性(教師としてのバランスはどうか) 以上の5点です。後はとにかく読みやすい文にすること。そのためには極力、一文を短くし、主述関係を意識して書くことです。あと、できるだけ具体的な内容にし、抽象論にならないように気をつける。凝った表現、洒落た文体は一切必要なし。 後はとにかくひたすら 「書きまくる!」→「添削指導を受ける」 を繰り返すのみ! 頑張ってください。 |
次に、実際のインターネットを利用した添削指導を載せる。
この小論文添削例は、教職センターホームページ上で閲覧することができる。
(本人の了解を得たもののみ掲載)
以下の添削例において、赤字は書き方・内容に関する全般的な助言・アドバイスを表し、 青字は実際の文章に関する訂正を表している。評価の基準は
- 十分合格ライン
- 後一歩で合格
- アドバイスを忠実に守ればBランク間近
- まずは小論文というものがどういうものかもう一度学習しよう
- まずは正しい日本語が使えるようになろう
の5段階を設定している。A,B評価の学生に対しては、特に細かいアドバイスは与えず、eメール上での指導を中心とする。一方、C,D,E評価の学生に関しては、単なるメール上での技術的な指導では不十分であると思われるため、程度に応じて、指導教員が学生を呼び、きめ細かい直接指導を行う。(小論文オフィスアワーの活用)
教員側の目標として、採用試験までに全員が最低C評価まで持っていくことを指導教員共通の到達目標としている。また、担当教官制を敷いているが、学生や教員の要望によって、一つの小論文を複数の教員で見ることによって様々な視点から添削指導する、複数添削制度も実施している。また、学生自身の目標として、一つの小論文に対し、最低C評価がもらえるまで繰り返す。最終章論文までには最低一回はB以上の評価をもらうことを目標とする。こうして、明確な目標を掲げることによって、学生自身のやる気を高め、惰性的な指導にならないように、一区切り毎に、できる限り直接学生に声かけをし、モチベーションの継続を図る。
添削例1 テーマ:「愛国心」についてあなたの考えを述べなさい。
(講評)
総合評価 B
○○君、第1回めの小論文作成お疲れ様でした。
誤字、脱字がなく、主述関係も正確、全体にクリアで、独りよがりではない論述になっています。段落の使い方も妥当です。それだけに、こちらの要求水準も自然と高くなります。
今回の論文の課題は次の3点にあると判断しました。
(1) 問題提起は妥当だったのだろうか
「誰に教えられるものでもなく、生まれ育った地に対して愛着を抱くような自然に心に抱くものではないだろうか。」とする問題提起。まず、誰に教えられるものでもないなら、そもそも学校教育でも教えられませんね。そして、その第1段落での問題提起が、後のどこにも正面から論じられていないのです。もう一度読み返してみてください。「公の教育で植えつけるものなのかは疑問だ」それから、前述の「誰に教えられる・・・ではないだろうか。」これらについて論証している箇所はまったくないのです。結語でその一部が繰り返されているだけです。これは論文としてはまずいですね。原因は、問題提起が自分の言いたい主張と十分に対応していないことにあるのではないでしょうか。問題提起の部分、または結論を含む論理展開のどちらかの再考が必要です。
(2) 論理展開が構造的に把握できるような書き表し方をしよう
前述の問題提起部分を含めてですが、各段落、そしてその中の文の関連を強く意図して文章全体を構成したいですね。例えば、第3段落の欧米と日本を比較する記述ですが、これが第4段落でどのように生かされているでしょうか。私は、第3段落の対比は、単に日本人の愛国心の希薄さの要因を説明するためだけのものではなく、背景の異なる欧米とは違う愛国心のあり方を導くためのものでもある、と読み取りました。そして、それに基づき、更に問題提起もよくふまえて青字で修正してみました。いかがでしょうか。第1段落、第3段落と第4段落のつながりが強くなったと思いませんか。
(3) 文章構成をよく練ってから書き始めよう
書き出す前に文章の構成を考えましたよね。主題(一番言いたいこと、結論)は何か。そして論を展開するために、問題提起、日本の現状、欧米との対比と考察、結論、とする4段落構成。そして、そのそれぞれのなかでどのような記述をしていくか。
ところが、(1)、(2) で指摘したように、論旨の一貫した構造的な文章には至りませんでした。では、どうしたらこうならずに済んだのでしょうか。それは、文章の構成を考えるときに、よく検討する事です。小論文の出来不出来はこの段階でほとんど決まるといえます。私が青字で行った修正の程度では、不十分です。第2段落も文章全体のなかでは浮き上がっていますね。
もう一度、主題と、問題提起、展開、結語のお互いの関係を考え、書き直してみてください。お待ちしています。
添削例2 テーマ:特色ある学校づくりにおける私の取り組み
(講評)
総合評価 C
お疲れ様でした。大変よく頑張って書いてくれましたが、現段階では小論文の形式になっていません。具体的には上の添削の中にありますが、直すべきポイントをいくつか箇 条書きで書き並べると
- 「です、ます調」(敬体)→できれば「だ、である調」(常体)の方が望ましい。
- 単なる事実が前後のつながりも考えずにだらだら書いてるだけであり、自分の意見が全く述べられていない。
- 「特色ある学校作りに関する私の取り組み」というタイトルであるにもかかわらず、何一つ、○○君自身の特色ある学校作りの具体的な取り組みが書かれていない。
- 自分自身、正しく使い切れていない言葉(例:「温故知新」)など言葉の的確性に欠ける部分が多い。
- 曖昧な指示語、(「こうした」、「これ」)が多く、ごまかし部分が多い。
繰り返し書けば必ず書けるようになるので頑張ってください。
- 例年以上に学生の意欲的な取り組みが見られ、受講学生も以前の2倍以上になった。これも、「いつでもどこでも取り組むことができる」という利便性に依るところが多いと思われる。しかし、逆に「いつでも取り組める」ということで、講座に登録しただけで満足している学生も見られ、取りかかるまでに時間を要するものもいた。
- 自身が空いた時間に添削指導できるので以前より指導人数が増加しても対応が可能となった。しかし、逆に対面指導で直接話せば簡単に済む指導が、Eメール上のやりとりでは返って手間がかかる部分もあり、また、指導上の微妙な話がメール上では伝わりにくい場合があった。
- ネット上で指導するのはインターネットの環境があれば可能なので一見便利だが、普段あまりネットを使わない学生や家に自由に使えるネット環境がないという学生にとってはむしろ手書きのが良いという意見もあり、実際に手書きやFAXで指導を行った学生もいた。また、小論文は字の丁寧さや、誤字、脱字も評価の対象になるがワープロで書く場合、漢字を知らなくても自動的に漢字に変換されるのでやはり、自分の手で実際に書いてみるということも大事である。
- 今までの手書きのが添削する時間が少なかったように思える。ワープロで線を引いたり 訂正したりするのは意外と手間がかかる。むしろFAXのが手軽で良いのではないか。
- ネットでの指導と対面指導を組み合わせたのは良かった。また、個別指導に入る前に全体学生に対する「論策文講座」を行ったのは、最低限の知識を持ってスタートできるので大変良かった。
- 休日など自宅や出先からでも添削指導できるのは良かった。ただ、ネットだけでの指導は限界がある。これまで以上に対面指導とどう組み合わせるかがポイント。
- 卒業生もわざわざ大学に来なくても指導が受けられるのは大変良い。
- 家でも大学でもネットさえ使えればできるので便利だった。
- ワープロで書くのは苦手なのでやはり手書きがよい。
- ワープロだと先生の助言を受けて簡単に直せるので便利。
- 先生からの添削が比較的速く返信されて来たので良かった。
- いちいち、先生の研究室まで取りに行く必要がなくなったので良かった。
- ネットだけの添削では味気ない。もっと先生の話を聞いて指導を受けたい。
- 直接指導の方が一人ひとりにきめ細かい指導をしてくれる気がする。
- HP上の小論文ページのマニュアルがためになった。
- 一つの小論文を複数の先生に見てもらうことができたのが良かった。
- HP上で他の学生の添削例を見ることができて参考になった。
- 卒業生でも受講することができるので良かった。
- 論理的な文章とは何かが分かった。
- 要点が分かり易く、論作文で何が一番大切なのかが分かった。
- 苦手意識が少し無くなった
- 小論文と作文の違いが分かった。
- どのように文を組み立てていくのかよく分かった。
- 新聞を読むことが大事だと思った。
- 自分の文の何が悪いのかがはっきりした。
問1:今回の講座はどうでしたか?
- 大変良かった:58名(38%)
- 良かった:71名(46%)
- 良くなかった:5名(3%)
- 未記入:1名(1%)
- 未提出:19名(12%)
問2:今回の講座は今後に役立つと思いますか
- 大いに役立つ:80名(52%)
- 少しは役立つ:37名(24%)
- あまり役立たない:2名(1%)
- わからない:5名(3%)
- 未記入:11名(7%)
- 未提出:19名(12%)
本取り組みの一番の成果は、「学生自身の小論文に対する意識が高まった」点にある。これまで小論文については採用試験の一次試験に合格した者が付け焼き刃的に取り組むといった状況が多かった。このため小論文の形式を学ぶのが精一杯で、内容的に深い小論文を書かせるまでに至らなかった。しかし、早い時期から自分のペースで取り組める本システムを導入したことによって、とりあえず登録する学生が増え、その結果として学生全体の意識が向上したと思われる。また、最大のメリットである「いつでもどこでも取り組める」点に関しては、遠距離通学をしている学生やクラブ活動などで忙しい学生にとって高い評価を得た。また教員においても、職場のみ成らず自宅においても空いた時間を有効に活用し添削出来る点はよりきめ細やかな指導を可能にしたと思われる。しかし、その一方で、Eメール中心の指導となり、従来のように学生を個別に呼び出して各自の小論文に対し、フェイス・トゥー・フェイスで指導する機会が大幅に減った。今後の課題としては、「いかにEメールによる指導とフェイス・トゥー・フェイスの指導を効果的に組み合わせ、より効果的な小論文指導ができるか」が挙げられる。
そして、本指導を通して一人でも多くの実践力のある学生を育成し、昨今の厳しい教育事情に立ち向かえる教員を輩出していきたい。
平成20年度教員採用試験の結果全体で50名程度(現役生、科目等履修生、卒業生合わせて)の合格者を輩出したが、 その内、論文講座を受講した学生は15名ほど合格した。(実際、受講生の内、2次試験の小論文まで進んだ学生はほとんど合格 15/19=79%の合格率)この結果を考えると、本講座の目標は十分に達成されたと思われる。今後はさらに既卒生がどれだけ多く受講でいるシステムにするかが成果飛躍の鍵と思われる。
- 近畿大学教職教育部編 2005「教員採用試験のための論作文」大阪教育図書株式会社
- 時事通信社 2006 内外教育研究会編 「論策文パスライン」 時事通信社








