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総合演習

新入生を対象とした導入ゼミ

「総合的な学習の時間」の指導に資する教育力の養成

参加型学習による学生相互の学び合い、励ましあい

「ラベル新聞」の活用

「プロセスチャート」の活用

文責: 関田 一彦

動画01 動画02 動画03

*動画は授業の雰囲気を伝えるものです。頁内容とのリンクは基本的にありません

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◆授業科目名:

総合演習

教育学部用教職必修科目(教育学部1年生(17名))半期2単位、2005年9月〜2006年1月(週1回)

◆授業担当者:

関田 一彦(創価大学教育学部)

◆テキスト:

なし

◆授業のテーマと目的:

「総合演習」は、新入生を対象とした導入ゼミと教職必修科目である教職総合演習という二つの性格を併せ持ちます。教職科目としての総合演習では、現行の学習指導要領から実施された「総合的な学習の時間」の指導に資する教育力の養成が意図されます。具体的内容は担当教員に委ねられますが、プロジェクト型の学習活動を通して自らの問題意識を深め、同時に、教師としてプロジェクトをデザインする技能を磨く授業が多いようです。

一方、導入教育における教育目標の最大のものは、学生たちの学習意欲の向上と専門分野への関心の深化、さらには大学という学びの場へ参加する動機付けだろうと考えます。その上で、学習意欲を持続するためにも、学習成果を高めるためにも大学生にふさわしい学習技能の習得が目指されることになると思うのです。

したがってこの授業では、教職総合演習の主眼である「総合的な学習の時間」の運用に関する理解と実践上のイメージ把握を助け、同時に導入ゼミの大目的である学ぶ意慾や態度の涵養および大学生に必要とされる学習技能の育成・向上が目指されることになります。

なお、教育学部の新入生のほとんどは教職課程に在籍しており、教職必修は事実上学部の必修科目としても機能しているので、新入生全体を対象にする導入ゼミとみなしても支障ないのが現状です。

この授業は参加型学習と呼ばれる授業方法を基に設計しています。参加型の授業づくりとして特に次の3つの活動に力を入れていますが、本稿では3番目の活動について報告します。

  1. 興味あるトピックごとに2~4名程度のグループを作らせ、プロジェクト活動と称して授業外に調査させ、授業時に発表させる。
  2. LTD学習を導入し、予習ノートを作成させる。そして予習ノートに基づいて授業時に話し合いをさせる。
  3. ラベル新聞を手がかりに、自らの学びを図解させ(プロセスチャート)、グループの仲間に向けて説明させる。

なお、授業全体としては協同学習の手法に基づいて、学生相互の学び合い、励ましあいを奨励しています。


ラベル新聞

毎回の授業で記入するラベルをまとめて新聞作りをします。2人一組で履修者名簿順に担当しますので、必ず1回は作ることになります。ラベルは内容ごとに分類し、担当者がそれぞれに工夫して作ります。ラベルの数が少ない(17枚)ので、全てを紙面に貼ることができますが、分類の仕方によって紙面づくりは変わってきます。

新聞は毎時間、授業初めにクラスに配布し、製作者が特徴をアピールします。学生たちはクラスメイトのラベルを読んで、前回の授業を思い出し、これから始まる授業に備えます。

ラベル新聞に用いるラベルは横浜国立大学の林義樹先生が20年以上前から自らの教育実践に用いているものです。(林先生が主宰する参画文化研究会を通して購入することができます。)私は林先生の『学生参画授業論』からラベル新聞やプロセスチャートづくりについて学びました。また、ラベル新聞の使い方について実際に武蔵大学(当時)での林先生の授業を計3回見学してきました。

授業終わりに学生からのフィードバックを受けるミニュツペーパーのような方法と異なり、林先生のラベル技法は授業のはじめでも途中でも、随時必要に応じてフィードバックを求めることができる、手軽なものです。また、教師がフィードバックに対してコメントを返すのではなく、学生たちに新聞を作らせ、それをクラス全体で共有することで学生たちの情報・感想交流を促すことができます。(むろん、教師が新聞を作り、学生の感想やコメントに対して応答することもできます。)ただし、私の場合は授業終わりにその日の感想や意見を1つ書くように指示し、それを翌週に新聞として配布する簡単な利用に留まっています。


プロセスチャート

自分の学びは自分のもの。自分が学んだ分だけ、自分には力がつき、成長していくんだ、という意識を持ってもらいたい。そんな願いを具現化するために、学期末にはプロセスチャートによる振り返り作業をさせます。毎回の授業で記入してきたラベルを手がかりにして、自らの学びを振り返り、成長の軌跡を図解させます。この図解したものをプロセスチャートと呼びますが、これも林先生の『学生参画授業論』を参考にしています。ただし、チャートを使った振り返りの方法に、私なりの工夫があります。

後期の場合、冬休みの宿題としてちょうどよいものです。それなりのものを作ろうとすれば、2〜3時間かかります。“はまってしまう”と半日以上、夢中になる人もいるようです。今回はプロセスチャートについて、授業アンケートの自由記述欄にコメントするように学生に指示しました。コメントはすべて振り返り作業を肯定的に捉えたものでした。詳しくは彼らの感想をご覧ください。


なお、ラベル新聞もプロセスチャートも成績に反映します。ラベル新聞は期限通りに作成し、翌週の授業で配布できれば満点(=3点)です。ただし、要求された体裁を満たさない粗いものは、期限通りに提出されたものでも減点の対象としました。期限に遅れると2点減点して1点に、未完成(未提出)だと0点になります。

プロセスチャートは最後の授業時に完成したものを持ってくれば満点(=7点)、未完成なら3点、未提出は0点とします。また、非常に創意工夫が見られたり、時間をかけた労作だったり、チャートを使った発表がうまく出来たりした場合、エクストラポイントとして3点を加えて10点にすることがあります。

冬休み直前の授業で、「学びのプロセス・チャートをつくろう」というプリントを配り、作成方法について指導します。また、先輩たちが作ったプロセスチャートの実物を紹介し、冬休みの宿題としてしっかり取り組むように指導します。なお、ここまでに課した全ての課題を返却し、プロセスチャート作成上の資料とします。


冬休み明けの授業が最終回となります。授業の大半(1時間弱)はプロセスチャートを使った振り返りに充てます。自分の総合演習での学びをプロセスチャートに表し、それを仲間に自慢?するように促すのです。同時に、聞く側は話し手が安心して話せるように共感的に傾聴するよう促します。その際、「学びの自慢大会」というプリントを配り、それぞれの役割を徹底させます。教師を目指す彼ら・彼女らにとって、児童生徒の成長を認め賞賛する力が求められます。この振り返り作業はその練習であることを強調します。

振り返り作業(注)は、まず4人組を作ることから始めます。今回は1名欠席でしたので、ちょうど4人組が4つできました。一人4分で自分のチャートを説明しますが、時間はタイマーで計り、教師が合図します。説明が終わると、グループのメンバー一人ひとりから賞賛のコメントをもらいます。一人1分として3分ですが、大体少し長くなるようです。教員はグループを回り、賞賛が適切かどうか点検します。必要なら見本を示し、言い直させることもあります。どのグループでも必ずメンバー全員から肯定的なコメントをもらったことを確かめて、次の人の説明を始めさせます。

プロセスチャートについては、授業アンケートの際、自由記述欄に感想を書くように促しました。全員が書いたわけではありませんが、コメントされたものはすべて以下に紹介します。(読みやすいように表記上最小限の修正をしてあります。また私への謝辞は割愛しました)。

最後にプロセスチャートをしたことで、色々なことを思い出せたし、自分が何をできるようになったかわかったので良かったと思います。人のプロセスチャートを見るのもすごくおもしろかったです。

プロセスチャートをやった事によって、この授業での自分の軌跡を振り返ることができ、学んだことなども再確認でき、自分で図や表を使って作る作業もとても楽しく、なおかつ心に刻まれた。

プロセスチャートはやってすごく良かった。みんなが頑張っていたことを聞いて、すごいなぁと感心した。自分を知ることは大切だと思った。ほめられるとやっぱり嬉しい。

学びのプロセスチャートを使った振り返りは、自分が何を学んで何を考え、何を感じたかを自己確認することができ、それをグループに分かれて説明することで学んだ内容を深めることができ、相手をほめることで相手が伝えたいことをしっかり掴む力をつけることができるので、良いと思います。

プロセスチャートによる振り返りでは、自分が学んだことを1)振り返る、2)書く、3)自慢する、という3ステップでより深く丁寧に振り返ることができた。誉めてもらえることで自信もつくと思う。

プロセスチャートによる振り返りは、その人にとって何が学べて身についたのか知ることができ、また、周りの人に褒めてもらうことでさらに自信がでるので、とても良い方法だと思いました。みんなの「学び」が分かって良かったです!!

プロセスチャートで授業を振り返ると、人から与えられるのでなく、自ら自分の成長について考えることができる。人から与えられる方が簡単だけど、自分で得た方が“これから”に生かせると思いました。

プロセスチャートを作るために、これまでの学習を振り返ることができた。毎回ラベルを書くことで、自分の学びが本当に振り返りやすかったです。また、自慢し合って互いに褒め合うことで、幸せな気分になりました。

プロセスチャートは、今までの自分を見直すという点で、忘れていた反省点や自分が良かった点を改めて思い起こし、これからの大学生活に活かすことができて良いと思う。

今までの授業でじっくり学びを振り返る機会が無かったので、新しい発見が色々ありました。より授業を印象づけてくれました。楽しかったです!

楽しく振り返れたし、一目で自分の成長や反省などがわかって、「振り返り⇒これから」につながったと思う。

最初の授業からは考えられないくらいこの授業を受けて良かったと思いました。今までの学びは本当に自分にとって大切だったのか、学んでどうなったのかが解りにくいものだったけど、自分の成長を自分で認め、他人にも認めてもらえること、そして他人を認めることができる自分がいる、ということをこの授業では学べて嬉しかったです。

全体として、かなり自分の力になった授業でした。課題やら宿題やら調査やらと、授業外の学習もたくさんあり、時間をとられて嫌になったり、学習が思うように進まず、投げ出したいと何度も思ったりしました。しかし、プロセスチャートを通して振り返り、色々あったけどどれほどたくさんの、大きなものを得たのだろうと思い、3ヵ月という短い時間の中で成長したと思えました。

ラベル新聞やプロセスチャートは、学生たちの授業への参画を促す仕掛けとして開発されたものです。ただ、私の授業では学生の主体的な参加を念頭に置きつつも、参画まで踏み込むことはしていません。それでもこの2つの道具は、学びの主体者としての自覚を促すのに十分有効だと思います。

私は、今の学生には人を褒める体験が不足していると思います。「相手を心から賞賛できる人は幸せな人です。なぜなら、その人は自分に自信があるからです。自分に自信がなければ相手を認めることは難しいでしょう。相手を認めてしまったら、自分は劣っていることになるかもしれない、という不安が心のどこかにあれば、素直に相手の成長を喜べないでしょう。褒めて人は育てるものだと言われますが、優れた教師は教え子の成長を心から喜びます。皆さんも、仲間の成長を心から賞賛できる人になってください。今日は、そのための練習です。おそらく、大学4年間で最初で最後の機会かもしれませんから、真剣に取り組んでください。」こんな具合にプロセスチャートを使った振り返り活動を意義付けています。

互いに自分の学びを仲間に解説するのですから、一種の相互評価になります。そのとき、どんな小さな変化や成長であっても暖かく認めてくれる仲間がいれば、自分の学びを自ら受け容れることが容易になると思うのです。小学校から大学まで、常に他人から押し付けられるように評価されてくれば、自分のことであっても、どこか他人事のように距離を置いて自らの学びを見てしまう態度が形成されても不思議ではないでしょう。自分の学びを意義付け、自らの人生の一部として引き受けることができれば、きっとその学生は主体的な学習者として大学生活を送れると思うのです。導入教育の眼目である学びへの動機付けあるいは学習意欲の向上を考えるとき、学生を自身の学びに対してどれだけ主体的にさせることができるか、という視点は重要でしょう。「学びの自慢大会」という学期末のイベントがどれほどの効果があるのかは不明です。効果の検証を課題としつつも、私は学生たちの笑顔に満足を覚えています。



(注) ビデオ映像は2005年7月に撮影したものです。総合演習は前期、後期に1コマずつ担当しており、プロセスチャートに対する感想および見本のチャートは後期の学生のものです。本来ならビデオ映像も同じ学生たちのものであるべきですが、後期の授業は録画していませんので前期のもので代用しました。クラスは違っても学生たちの様子はあまり変わりませんので、プロセスチャートを使った振り返りの様子を伝えるには十分だと判断しました。

(付記) ビデオの撮影および編集に際して、創価大学 教育・学習活動支援センターの堀舘秀一特別センター員に大変お世話になりました。記して感謝します。

林義樹 (1994)『学生参画授業論--人間らしい「学びの場づくり」の理論と方法--』 学文社

学びのプロセス・チャートをつくろう (プロセスチャート作成の手引き)

学びの自慢大会 (プロセスチャートを使った振り返り活動の手引き)

作品見本(制作した学生の名前が分からないように修正してあります)