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情報教育論

通信教育におけるスクーリングの特殊性への対応

互いを情報源として活用する協同学習

自分で考えて話すという作業の促進

「振り返りシート」の活用

文責: 関田 一彦

動画01 動画02 動画03

*動画は授業の雰囲気を伝えるものです。頁内容とのリンクは基本的にありません

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◆授業科目名:

情報教育論

◆授業担当者:

関田 一彦 (創価大学教育学部)

◆テキスト:

『教育情報学入門』創価大学出版会

◆授業のテーマと目的:

情報教育論は通信教育部が開講している教育学系科目(教職課程を含む)の一つである。学生は夏あるいは秋のスクーリングに参加するか、レポートを2本提出するか、いずれかで2単位を取得する。ここ数年、スクーリングの受講生は増加傾向にあり、ここで報告する実践では200名ほどであった。受講生の年齢は20歳前後から70歳代まで幅広いが、多くは20歳代から30歳代半ばまでの教職志望者である。

この授業を通じての学習目標は、1)情報教育とは何かを説明できるようになる、2)教師として情報教育を実践するための構想を持つことができる、そして3)メディアリテラシー育成の意義と方法について基本的な考え方が理解できる、以上3点である。小中学校における「情報教育」の取り組みが本格的に始まったのは1990年代からであり、受講生の多くは「情報教育」を受けた経験を持たない。また、受けた経験がある者でも、それは断片的である。そこでこの授業では、コンピュータを利用した授業事例を中心に、10種類以上のビデオ教材を用いて受講生の情報教育に関するイメージ作りを助けている。

スクーリングに参加するために直前まで必死で働き、漸く職場の理解を得て休暇を取って参加してくる社会人。あるいは、いつもより朝早く起き、家族の世話を済ませて駆けつけてくる主婦の方々。彼ら彼女らに、通常の学部生と同じ量の予習復習を期待するのは酷だろう。まして、2日間集中の授業では、十分に講義内容を咀嚼するゆとりも無いだろう。さらに、スクーリングで初めて出会う見ず知らずの人たちに囲まれて、長時間慣れない学習に取り組む疲労は相当であろう。

このようなスクーリングの特殊性に対応するために、私は頻繁に協同的な学習活動を授業に取り入れている(関田 2004a)。学生たちは前後左右の学友とともに、様々な話し合い学習を行う。その際、相手の話をよく聴き、相手の学び(理解度)に気遣いながら一緒に課題を達成していく大切さが強調される。初対面の学友たちは、最初のうちは戸惑いながら話し合っているが、その日の終わりには明日の再会を心待ちにする仲になっている。「はじめてのスクーリングで不安だったが、一緒に学ぶ仲間ができてよかった」、「こんなに友達ができたスクーリングは初めてだ」、「話し合いを通してグループの仲間から多くのことを学べた」、「話し合って学ぶ方が身につくことを実感した」等など、協同学習の効果に対する驚きと喜びのコメントが多数寄せられる。こうした友好的な人間関係と話し合いを促進する課題設定に支えられて(関田 2004b)、彼らの学習意欲は授業終了まで継続していく。

情報教育というとコンピュータを使った授業のこと、という短絡的なイメージしか持たない学生が大半である。むろん、コンピュータに代表される様々な情報機器あるいはICTを活用した授業づくりも情報教育のテーマではある。けれど、情報教育で育成しようとする情報活用能力は、情報機器という道具を使った情報の収集・加工・発信に限定されるものではない。情報活用能力とは情報社会に“生きる力”であり、よりよく生きる(自ら学び、考え、解決する)ための情報活用という視点を意識させることが、この授業の大きな課題である。

そこで、学生同士が質問し合い、説明し合うことを必然とする協同学習を用い、互いを情報源として活用するように仕向けている。自分の持っている情報(知識)を相手の理解に役立てることが出来てはじめて、その情報は活用されたことになる。あるいは、自分の理解を確かなものにするために、周囲から情報(意見や説明)を有効に収集出来てはじめて情報活用能力なのである。このように、情報活用能力の本質をアナログな対話という手法を使って体験的に理解させようとしている。

授業全体では適宜、ウォーミングアップや振り返りなど、協同学習を円滑に進める上で有益な活動を組み入れている。特に、はじめの1時間は私の授業方針(方法)のガイダンスに費やす。隣同士の自己紹介からはじめて、前後4人組みになってのパートナー紹介まで、互いに話し合って学ぶという姿勢の大切さとその効用を強調する。協同学習の意義を納得させないと、話し合いに加わらない学生が増えてしまう。

授業は、各トピックに関する質問(課題)を提示し、まず個人で考えさせ、次にグループで各自の考えを検討し、必要に応じてクラス全体で共有するパターンの繰り返しである。学生たちに先に話し合わせて、その内容にコメントする形でポイントを整理する場合もあれば、私が先に講義したりビデオを見せたりして考える材料を与え、その内容に関する問いを後から話し合わせる場合もある。映像クリップで紹介している部分の講義の流れを表にまとめた。この部分は、初日の午前中の作業であり、話し合い活動に慣れてもらうために、指示も少し過剰な感じではあるが雰囲気はつかめるだろう。

表)スクーリング科目「情報教育論」における授業の手順
時間配分 働きかけ(発問・指示・解説) 備 考
 

発問1)皆さんが生きている情報社会とは何か?定義してみましょう。

 
(1〜3分間)

指示1)自分の言葉で、自分のノートに定義を書きましょう。

個人で考える
(5〜7分間)

指示2)次に、チームで自分たちの定義を紹介しあい、互いの良いところを統合して、チームとして一つの定義をつくりなさい。その際、必ず全員が順に自分の考えを述べてから、まとめはじめること。

順番に全員発表する
チームでまとめ

指示3)あとで、クラスに発表してもらいますので、チームの誰が指名されてもきちんと答えられるように、互いに準備してください。

チームの責任を明確化する
(10分以上)

指示4)これからクラス全体のために、各グループの定義を発表してもらいますが、次の2点に気をつけてください。

1)指名された人は、グループの代表として、堂々と自信をもって話してください。ただし、同じような定義が先に言われたら、パスして結構 です。前のグループの発表を良く聞いて、なるべく重複は避けてください。

2)発表を聞く人たちは、自分たちの定義にはない、新しい視点や素敵な表現など、気づいたことはどんどん自分のノートに追加しましょう。他のグループからどれだけ学べるかが、ポイントです。


クラスへの貢献を意識させる

発表の指導



聞き方の指導
(3分程度)

解説)今、クラス全体でいくつくらい定義が出てきましたか?自分たちの定義に、何か新しい付け足しや修正があったチームは手を挙げてください。

かなりのチームが新たに何かを学んだようですね。自分たちの限界を超えて、新たな考えが深まるのはクラスの力です。皆さんは、教師から一方的に学ぶことに慣れていますが、クラスの仲間から学ぶことが大切です。誰からでも学べる人は素晴らしいです。


活動の振り返り


クラス全体で協同する意義を確認する

午前中の授業では最後の数分を使って、午前中に学んだことで一番重要と思うことを一つ、その理由も合わせて「振り返りシート」に記入してもらっている。これを使って午後最初の話し合いを行う。隣同士、午前中何を学んだのか尋ね合い、説明し合う。これは授業への導入をスムースにしてくれる。なにしろ日ごろ机に向かって何時間も勉強することのない社会人である。午前中の3時間で学んだことを手短に思い出すことで、新しい内容を学ぶ準備をさせるのは有効だと考える。また、昼食から戻るのが遅れた若干の学生たちも、この振り返りタイムの間には席に戻ってくる。

同様に、午後の終わりにも数分を使って、午後学んだことを一つ記入させる。ここで、隣同士一緒に学びあった仲間に対して、感謝の言葉を述べてから帰路につくように促す。二日目の朝は、前日の振り返りシートを使った、前日学んだことを説明しあうところから授業は始める。この振り返り作業は学習効果だけでなく、学びあう仲間として互いを意識させるにも有効だと思う。

(誤記と思われる箇所もそのままにしてある)

この授業の成績分布は受講者総数162名中、A評定8名、B評定109名、C評定41名、D評定(不合格)4名であった。評価は、授業のねらいをどの程度達成したか判断するために40分程度の記述式試験を最後に行った。以下の授業への感想は、学生たちが自主的に答案用紙の余白に書いたものである。感想は全体の1/4ほどの受講生が書いていたが、年齢と内容が多様になるようにその一部を紹介する。なお、( )の中のアルファベットは評定を表す。

(23歳女性 C)私たちの時代にはコンピュータを使った授業がなかったので、この科目を受けて驚きの連続でした。どんな職業についても今はコンピュータが使えるのが当たり前の時代になっているので、私も少し使えるようにならないといけないかなと思いました。すごくたくさんの情報について学べてよかったです。

(22歳女性 B)情報教育とは、ただコンピュータの導入も踏まえた教育だと思っていた。だが、それは違っていた。学んでいくうちに、とても興味がでてきた。総合学習にも関わりをもっているとは驚いた。でもよく考えてみると総合学習では調べるためにインターネットの利用は出てきていた。もう少し深めていくと情報教育につながっていくのだとわかった。・・・2日間ありがとうございました。

(23歳女性 B)2日間、ありがとうございました。先生が一方的に話すわけではなく、私たちにも話し合う時間もいただいて、あきない授業で集中して勉強に取り組めて、とても楽しかったです。同じグループの人とも交流ができ、本当にありがとうございました。

(23歳女性 B)この授業を受けて、隣やグループの人と授業以外でもたくさん話すことができて、同じ教師を目指す仲間もいて、とてもよい刺激になりました。話し合ったりしたので、考えることが多く、理解をより深くできたのではないかと思います。

(22歳男性 B)2日間本当にありがとうございました。卒業するまでに残りのスクーリング科目が2つとなりました。その1つが先生の授業でとても良かったです。ありがとうございました。

(22歳男性 B)風邪でダウンしかけの状態で秋スクに望み、この授業を受講しましたが、重要かつ必要なことを学ぶことができたので、来て良かったです。

(23歳女性 C)今回、スクーリングが初めてでとても不安でした。名古屋から来ているため、わからないことばかりで、神経を使い疲れてしまい、授業中うとうとと居眠りをしてしまい、申し訳ありませんでした。しかし、グループやペアの人が助けてくれ、今どんなことをしていたかを教えてくれたりノートを見せてくれました。先生は寝ていた方が悪い!というのではなく、グループで協力し合うことが大切と教えてくれ、私も生徒たちに力を合わせることの大切さを教えていきたいなと思いました。ありがとうございました。

(30歳男性 C)先生の授業は、先生と学生のやりとりがあったり、学生どうしのやりとりがあったり、とてもよかったです。小学校、中学校では、これがあたり前なのに、高校、大学になったら先生ばっかりが話しているのはどうしてでしょうか?きっとこれからは、高校、大学の授業もこんなふうに変わると思います。

(30歳男性 C)授業はとてもわかりやすくグループのみんなで意見をいいあったりする中で他の授業のように聞くだけでなかったのでよりいっそう授業内容が理解できました。又情報教育について特に現在の知らないことがけっこうあってすごく勉強になりました。スクーリングに参加してよかったです。有難うございました。

(59歳女性 B)情報教育とはコンピューター、デジカメ、ファックス等を使いこなすだけでなく、情報手段を適切に収集、判断、表現、処理能力を養い生きる力をつけるために必要であることを学びました。

(54歳女性 A)グループ学習をする事で知識のみの授業でなく、人間的なふれあいができたのしい2日間でした。通教を続ける力をいただきました。ありがとうございました。

(57歳女性 B)とてもユニークで面白い授業でした。もっと授業があればと思いました。ありがとうございました。

(55歳男性 B)現役の高校教員です。時間があれば終了後、先生のお話をお聞きしたいのですが電車の時間もあり、早目に失礼します。いつもとは違った授業展開でG学習をする事により、より幅の広い意見があることを発見しました。また、見ず知らずの人とも、会った時から友人のように話せる事の授業展開の素晴らしさも体験できました。ありがとうございました。「振り返りシート」の活用は、授業内容を確認でき、とても良いものでした。活用させて頂きます。

(67歳女性 C)今回の勉強はむずかしかったです。ありがとう御座いました。

(66歳女性 B)2日間学びの大切さとグループでの話し合いによる確認をすることで学んだことを再確認できることができました。情報という学問を学ばせていただきありがとうございました。

冒頭述べたように、通信教育におけるスクーリング集中講義という特殊性を考慮した授業である。感想を読むと、成績に関わりなく肯定的なものがほとんどである。この傾向は、協同学習の手法を取りいれて以来、他の科目(私は教育心理学も担当している)でも一貫している。実際、私の授業は600名近い収容定員の階段教室で行われるが、「スクーリングではじめて居眠りせずに最後まで授業を聞けました」というコメントが、何人もの学生から寄せられる。時には300名を超える学生を相手にグループ活動を導入するには不向きな環境ではあるが、協同学習が通信教育に学ぶ学生に有益な授業法であることは、多くのコメントが示している。

誤解を恐れずにいえば、私の授業は講義内容を理解(記憶)させることより、講義内容で考えさせることに重点を置いている。要点を板書して整理することをあまりしない。漢字を忘れて慌てるのが嫌なこともあるが、板書された事項(だけ)を必死に覚えようとする学習態度を少しでも崩したと思うからである。そのせいか、「今回の勉強はむずかしかったです。」という類の感想は、数は少ないものの必ずある。講義を聴く限りでは、あるいは周囲と話し合う限りでは解ったつもりになっても、自分で答案を書く段になってまとめきれないのである。この授業の感想にはなかったが、「先生は私たちに話し合わせて、結局なにが正解なのか説明してくれない。もっと先生の考えを聞きたかった。」といった感想もしばしば見られる。こちらとしては、答え(らしきもの)を聞いたとたん、考えることを止めてしまう悪い学習癖を直して欲しいと願っているのだが。

考えさせることを重視するということは、こちらが期待する正解に至らない話し合いも、まずは許容するということになる。「間違っても良いから、うそでも良いから自分の言葉で話しなさい」と授業中何度も奨励している。これによって、自分で考えて話すという作業が促進されるのだが、おそらくこれがこの授業の楽しさの源泉なのであろう。

関田一彦(2004a)「第二章 協同学習のすすめ」 杉江・他編著 『大学授業を活性化する方法』 玉川大学出版部.

関田一彦(2004b)「集中講義「教育心理学」が受講者の心理的態度に与える影響」 創価大学教育学部論集、56号、pp.67-78.

具体的な協同学習の指導法に関心のある方には次の3冊が役立つだろう。

E. Barkley., P. Cross., & C. Major. (2005). Collaborative Learning Techniques: A Handbook for College Faculty. San Francisco: Jossey-Bass.

ジェイコブズ・パワー・イエン(1998/邦訳2005) 『先生のためのアイデアブック 協同学習の基本原則とテイクニック』 ナカニシヤ出版

ジョンソン・ジョンソン・スミス(1991/邦訳2001) 『学生参加型の大学授業 協同学習の実践ガイド』 玉川大学出版部