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和歌山大学における公開授業&検討会

(5-a) 公開授業と授業検討会

和歌山大学の実践事例

文責: 吉田 雅章

動画01 動画02 動画03

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◆授業科目名:

和歌山大学における公開授業&検討会

◆授業担当者:

吉田雅章 (和歌山大学経済学部助教授)

和歌山大学においては、1997年12月よりFDに取り組むことが論ぜられ、1998年3月に5人の教員により構成された和歌山大学FD研究会が 創設され、1999年4月からは同研究会を発展的に改組し、9人の教員により構成される和歌山大学FD推進委員会が発足し、これらを中心に FDが進められました。その間、FDを先行して推進している大学や関係機関を訪問し、具体的にどのような活動をすべきか検討した結果、 以下に述べますように、1999年度以降、京都大学高等教育教授システム開発センターの「公開実験授業」と検討会を参考にして、 公開授業&検討会を和歌山大学でも実施することになりました。

1998年6月1日、京都大学高等教育教授システム開発センターへ伺い、石村雅雄助教授より京都大学におけるFDに関する説明を受け、 引き続き田中毎実教授の公開実験授業を参観させていただきました。そして、1998年度は和歌山大学FD研究会のメンバーのべ10名が 京都大学の公開実験授業とその検討会に参加しました。その間、石村助教授より筆者に対して、筆者の授業を参観したい旨のメールがあり、 このことをFD研究会で報告しますと、京都大学を参考にして公開授業を開催し、京都大学高等教育教授システム開発センターの先生方に 検討会のゲストコメンテーターとしてお越しいただき、そのノウハウをご披露していただこうと、当時の学生部長が話を広げたのが1999年度の 公開授業開催のきっかけでした。また、第1回FD推進委員会で、公開授業の実施がFD研究会からの引継ぎ事項であると報告しますと、 「極めて興味深い試みであり、できるだけ早く実現させるべきである」と、一部の委員が推奨したことが公開授業実施、それも前期の6月実施への 大きなきっかけとなりました。

開講科目については、できれば全学共通の教養科目であることが望ましいという議論になり、担当者については、FD研究会と FD推進委員会のメンバーであり、京都大学の公開実験授業を何度も参観している筆者ということになりました。そこで、 「日々のくらしと法律」という開講期間半年の2単位の科目を、従来の一般教養科目に相当する基礎教育科目として臨時開設し、 数回にわたり公開し、授業後の検討会は、京都大学高等教育教授システム開発センターの先生方に参加いただき、FD座談会という 形式をとるということになりました。また、公開授業と検討会の準備や事務に関しては、基礎教育科目ならびにFDを担当している 学生部学生課(当時の名称で、現在は異なります)に依頼することになりました。

当日のテーマは「交通(自動車)事故と損害賠償」についてであり、授業後、約1時間にわたり検討会を開催しました。検討会の出席者は、 当時の学長と学生部長、そしてFD推進委員会委員の4教員で、学生課長および学生課諸氏に検討会の発言録作成をお願いしました。当初、 授業後の検討会は、本部・事務局3階の共通会議室で実施する予定だったのですが、くつろいだ雰囲気でするのが良いという学長の好意により、 学長室にてアルコールとおつまみを用意して実施しました。

最初の公開授業

最初の公開授業

なお、公開授業における受講学生の出席数は44名(登録は61名)で、ほぼ普段通りでした。そして公開授業の参観者数は13名で、 検討会の参加者数は上述のように7名でした。参加者数をいかに増やすかが今後の課題となりました。

学生たちの様子 授業の参観者の様子

公開授業の様子(左:学生たちの様子,右:授業の参観者の様子)

検討会では、事前に実施した学生による授業評価の結果を報告した後、授業者以外の教員による評価、検討会の議論をどう進めるか、 今後、公開授業をどう展開するか(例えば、他の教員にも実施を依頼する)などについて意見が交わされました。残念ながら、実施時間が 夕刻でみんな疲れており、ビデオテープも録音テープも無く、発言内容を再現することはできませんでした。この反省を糧に、 後期の公開授業と検討会には、ビデオカメラとカセットテープレコーダーを用意し、大学院生にそれらの操作と発言録作成を お願いすることになりました。

1999年度(1人−5回)

  • (1)〜(5)「日々のくらしと法律」(和歌山大学基礎教育科目、臨時開設)担当:吉田雅章1回目は前期の夜間主コースで、 残り4回は後期の昼間主コースで開催しました。

2000年度(5人−5回)

  • (1)「初等体育科教育法」(教育学部専門教育科目)担当:出原泰明 教育学部教授
  • (2)「経営戦略論」(経済学部専門教育科目)担当:吉村典久 経済学部助教授
  • (3)「英語」(和歌山大学基礎教育科目)担当:奥田隆一 教育学部教授
  • (4)「デザイン情報演習?W」(シス工専門教育科目)担当:満田成紀 システム工学部講師
  • (5)「精密物質実験B」(システム工学部専門教育科目)担当:田中和彦システム工学部教授

2001年度(13人−14回)

  • (1)「民法[親族・相続]」(経済学部専門教育科目)担当:吉田雅章
  • (2)「英語」(和歌山大学基礎教育科目)担当:江利川春雄 教育学部助教授
  • (3)「民法[親族・相続]」(経済学部専門教育科目)担当:吉田雅章
  • (4)「英語」(和歌山大学基礎教育科目)担当:林桂子 教育学部助教授
  • (5)「デザイン情報概論」(シス工専門教育科目)担当:河原英紀 システム工学部教授
  • (6)「波動・光」(システム工学部専門教育科目)担当:越本泰弘 システム工学部教授
  • (7)「宇宙の環境」(教育学部専門教育科目)担当:富田晃彦 教育学部助教授
  • (8)「微積分2」(システム工学部基礎専門科目)担当:柴山健伸 システム工学部助教授
  • (9)「初等社会科教育法」(教育学部専門教育科目)担当:川本治雄 教育学部教授
  • (10)「都市計画」(システム工学部専門教育科目)担当:濱田学昭 システム工学部教授
  • (11)「英語」(和歌山大学基礎教育科目)担当:亀山幸枝 経済学部助教授
  • (12)「経済刑法」(経済学部専門教育科目)担当:重井輝忠 経済学部講師
  • (13)「財政政策各論」(経済学部専門教育科目)担当:河音琢郎 経済学部助教授
  • (14)「英語」(和歌山大学基礎教育科目)担当:遠藤史 経済学部助教授

2002年度(12人−13回)

  • (1)「民法[債権総論]」(経済学部専門教育科目)担当:吉田雅章
  • (2)「民法[債権各論]」(経済学部専門教育科目)担当:吉田雅章
  • (3)「教育政策論」(教育学部専門教育科目)担当:山下晃一 教育学部助教授
  • (4)「英語」(和歌山大学基礎教育科目)担当:亀山幸枝 経済学部助教授
  • (5)「刑法[責任論]」(経済学部専門教育科目)担当:重井輝忠 経済学部講師
  • (6)「社会福祉関係法」(経済学部専門教育科目)担当:金川めぐみ 経済学部講師
  • (7)「森林環境学」(システム工学部専門教育科目)担当:中島敦司システム工学部助教授
  • (8)「生活とデザイン」(和歌山大学基礎教育科目)担当:佐渡山安彦 システム工学部教授
  • (9)「光メカトロニクス概論」(シス工専門教育科目)担当:岡村康行システム工学部教授
  • (10)「精密物質概論」(システム工学部専門教育科目)担当:大槻修 システム工学部長
  • (11)「英語」(和歌山大学基礎教育科目)担当:遠藤史 経済学部助教授
  • (12)「英語」(和歌山大学基礎教育科目)担当:武田勝昭 教育学部教授
  • (13)「国文学史」(教育学部専門教育科目)担当:菊川恵三 教育学部教授

従来は単に感想を述べ合うということが多かったように思います。公開授業の担当者が変わり、検討会の参加者も毎回大幅に変動し、 講義形式も異なるので、一定のマニュアルを作成してそれに従って検討会を進めるということは極めて困難だったからです。

また、学外から招聘したゲストコメンテーターの存在意義は極めて大きく、予算その他の面で問題がなければ毎回お越しいただければと思っております。

なお、2002年度は、「大学授業分析の方法論的探求・蓄積・共有」を課題としました。もちろん、最初に参加者全員が簡潔に感想を述べ合い、 各回固有の検討テーマを議論します。その後で、公開授業に共通する検討テーマ、たとえば当該講義の位置づけ、担当教員の意図、講義素材の 意義と課題、講義方法の意義と課題などを議論するようにしました。

公開授業後の検討会に関して、どのような内容の議論がなされるのかという質問をよく受けました。これに対しては、具体的に 回答することもできるし、和歌山大学FD報告書を読んでほしいと回答することもできると思いました。しかし、実際に、自前の公開授業や 検討会を実施したり、京都大学高等教育教授システム開発センターのように、公開実験授業のようなプログラムを実施している機関に 参加したりすることの方がはるかに有意義なことではなかろうかと考えております。

公開授業と検討会、その他FDのプログラムへの参加者が少ないということは、和歌山大学のみならず、他の大学でもよく聞くことで、 その根本的解決策を見出すことは今のところ不可能であるとされています。原因としては種々雑多でしょうが、大学教員の意欲・やる気のなさが 最大の原因であると一般に言われていますし、その通りだとも思います。これに対しては、教員研修に参加すれば特典を与えるとか、 逆に教員研修に参加しなければ損をするとかのような意見が出されてはいますが、積極的に取り入れられる解決策ではありません。 この点に関しては今後に残された課題と思います。

和歌山大学の公開授業&検討会は、当初、開催すること自体が主たる目的で、公開授業と検討会により得られた成果をいかに活用してゆくかに まで踏み込むことはできませんでした。しかし、平成14年度は検討会そのものの構造をどうするかということも、別途、研究会を開催して 検討しており、単なる感想を述べ合うことでとどまってはいけないと考えました。公開授業後の検討会の議論を有機的に授業改善に役立てるべく、 いわゆる「メタ検討会」を別個に開催する段階に達したといえます。

メタ検討会の実際の検討内容は、下記の通りです。山下晃一教育学部助教授の提案に基づき次の3点を問題としました。

  • (1)FD推進のマスタープランの作成
  • (2) 大学授業分析の方法論的追求・蓄積・検討
  • (3) 外部組織との相互批評的連携

これらの点を念頭に置いて公開授業&検討会を今後も継続して開催してゆこうということになりました。とりわけ、授業分析の 蓄積に向けた公開授業&検討会の開催を目的として、川本治雄教育学部教授を中心に、和歌山大学だけではなく他大学や和歌山県下の 小中高校と連携をとってゆくことを検討することになりました。

なお、さしあたり検討会の議論の筋立てとして、今後は次の富田晃彦教育学部助教授のメモを標準にすることも決定しました。

1.内容の面から
  • 1.1.学術的内容−大学の講義として、質・量が妥当かという観点。学問内容を理解している人からの助言が必要。
  • 1.2.授業の位置付け−講義全体(半年)の中での今回の授業の位置付け、他の授業群の中での位置付け、(学部(や大学) の目的の中での位置付け)という観点。
  • 1.3.教材−配布資料の質・量。これら教材の調達先の妥当性、よりよい素材の可能性。授業の動機付け。
2.教室内の技術の面から
  • 2.1.授業の形式−受講生人数に応じた授業の形式。討論などの取り入れ。
  • 2.2.時間構成−全体の時間配分。授業の最初、前回授業の簡単な復習。終わり方。
  • 2.3.実際の演技−板書、口述(声の大きさ、速度、間)、姿勢(壇上での動き)の観点。
  • 2.4.受講者とのやりとり−資料音読、ミニレポート、静粛の保持、出席確認などの観点
  • 2.5.討論、演習などの進め方−討論形式、演習形式の場合。
  • 2.6.電子教材の利用−計算機や情報機器の効果的利用法。
3.受講生の意見(上記観点を含む)から
メタ検討会の様子

<メタ検討会の様子>

また、従来は、和歌山大学全教員に周知徹底して(開かれた構造で)開催していた公開授業ですが、FDは教員の「相互研修」であることを 重視して、2002年度は17名の研究会メンバーと学長・副学長・FD推進委員会メンバーに限定して(閉じた構造で)開催を通知し、 公開授業担当者と参観者の立場の互換性を確保する方向で実践しました。これによって検討会の方向性を研究会メンバーで共有し、 公開授業と検討会をより意義あるものにすることを企図しています。

活動当初は、張り切っている学生部長と学生課長の指示に従いしんどい仕事を引き受けて災難だと思いました。しかし、 FD活動をしている関係者全員が手厚く扱われたことには驚きました。蛇足ではありますが、和歌山大学の公開授業&検討会を上述とは 異なる角度からプラス・マイナス両面に分けてほんの少し振り返ります。

プラス面では、外部評価(第三者評価)で極めて高く評価されました。これは学長をはじめとする執行部の経済的支援があったことも 大きな要因だと思います。また、1998年以前より和歌山大学の教育を考えている人たちの存在を認識することができました。少数ではありますが、 各学部より協力してくれる人たちが現れました。

マイナス面では、参加者が伸びません。上述した通りです。せっかく実施しているのに来てくれないなあと感じることがしばしばです。 また、公開授業実施に関して頼れる教員がまだまだ少ないです。残念ではありますが、「FDは一部の人がやっていればよい」という人も いるくらいです。

和歌山大学のFD活動と公開授業&検討会の詳細は以下の7冊を参照してください。
*これまでの悪戦苦闘の記録ですが、7冊すべて吉田が編集いたしました。

  • 和歌山大学FD研究会 1999 『 平成10年度和歌山大学FD報告書
  • 和歌山大学FD推進委員会 2000 『 平成11年度和歌山大学FD報告書
  • 和歌山大学FD推進委員会 2001 『平成12年度和歌山大学FD報告書』
  • 和歌山大学FD推進委員会 2002 『平成13年度和歌山大学FD報告書』
  • 和歌山大学FD推進委員会 2003 『平成14年度和歌山大学FD報告書』
  • 和歌山大学・魅力ある大学授業を研究する会 2002 『平成13年度和歌山大学「大学特別経費」研究報告書・公開授業と授業改善』
  • 和歌山大学・魅力ある大学授業を研究する会 2003 『平成14年度和歌山大学「大学特別経費」研究報告書・公開授業と授業改善』第2号

和歌山大学のFD活動と公開授業&検討会に対する分析と検討は以下の拙稿を参照してください。